No.14

感情の受け皿となる
アイデアで
より良いユーザー体験を

UX/UI

ユーザー中心のモノ作りの考え方であるUX/UI。2022年にビービーメディアの有志メンバーでUX/UIの勉強会を始めました。そこからの成長や、これからの挑戦について伺いました。

  • 小林 隼也|デザイナー

    2016年/2021年入社
    Webデザインからアプリ・サービスデザインなど幅広いデザイン領域に従事。前職でUXデザイナーとして経験した人間中心設計(HCD)の考え方を踏まえ、社内でUX/UIの勉強会を始めるなど、ユーザー視点のコンテンツ制作を研究・実践している。

  • 田中 仁史|企画演出

    2004年入社
    テレビCMやWebムービーの企画や演出に従事しながら、クライアントやユーザーの潜在的なニーズを解決するようなコンテンツのプランニングも行う。

UX/UIとは?

そもそもUX/UIとは何なのでしょうか

小林 前提として、UX(User Experience)という大きなくくりの中にUI(User Interface)があるイメージです。
その上でまずUXは、ユーザーが商品やサービスを見たり、使ったりするうえで得られる「体験」のことを指します。使っていて楽しいだとか、また使いたいなと思う感情だとか、そういった体験を作るのがUX。UIはその中でも、ユーザーとコンテンツの間で直接目に見える接点(インターフェース)のことを指します。見た目の美しさ・かっこよさだけでなく、ユーザビリティやアクセシビリティを考慮することも求められます。対象ユーザーに最適化されたUX/UIを提供し、ストレスなくコンテンツを体験できるようにすることが大切です。

ビービーメディアの仕事では、どんなところにUX/UIの考え方が使われていますか

小林 ウェブサイトで言うと、サイトに訪れたユーザーが回遊してアクションを起こすまでの操作性や、ユーザーが欲しいと思っている情報がすぐ見つけられるか、ユーザーにとって魅力的と思えるビジュアル作りができているか、などを考える際に使っていますね。ターゲットユーザーに対して良い印象や体験を与えられているか、デザインだけでなく情報設計全体も含めてUX/UIの領域として捉えています。
映像だとどういった部分に使われていますか?

田中 特にテレビCMなどの映像だと、UXの考え方は企画で生かされ、UIは演出となる部分に近いと思っています。
みなさんなんとなく映像を見ていると思うんですけど、テレビCMは「買ってもらうためにはどうしたら良いか」をしっかり考えて演出を設計しています。例えばコンテを書くときには、商品を見せるためにタレントさんにどう持ってもらって、どういう動きをして、笑顔が見えるか、ナレーションは何を入れるか…色々な要素を組み合わせて演出としているんです。
CMの演出をUIというと少し新しすぎるかもしれないけれど、商品の魅力を伝えるためのインターフェースとしては演出もUIだと思っていて、実はここに一番比重を置いて考えていますね。

有志でのUX/UI推進

UX/UIの勉強会を始めたきっかけを教えてください

小林 もともとは僕が一旦ビービーメディアを辞めて、転職先の会社でUXデザイナーとして働いていたことが大きいです。そこではBtoB向けのアンケートサービスのUXデザイナーとして働いていました。要件定義、仕様設計、ディレクション、デザイン…とサービスの体験を作り上げていく上での一連のプロセスを経験できたとともに、人間中心設計(HCD)の考え方にも触れることができました。
そんな経験をしてビービーメディアに戻ってきたときに、「前職での経験を活かしてみないか」と上司に言われたのがきっかけです。そこで興味のある方に声をかけて、人が集まってきたのが始まりですね。

勉強会ではどのような活動をしているのですか

小林 基本的に隔週に1回、1時間で、UX/UIのアイデアを出し合ったり、意見交換を行っています。案件で急ぎのアイデアが必要になったときは突発で集まったりもしますね。
メンバーはデザイナー、企画演出、ディレクター、エンジニア等々、多くの職種がバランスよく入っています。UX/UIもテーマが広いので、それぞれの職種から興味を持つメンバーが有志で集まっています。

田中 みんなが面白いって言って参加してくれるのがいいよね。

小林 肩ひじ張らずに、フラットに意見を言い合える場というのは貴重ですね。

田中 案件で相談を持ちかけられたときに、この場があるから受けやすいみたいな時もあります。方向性が同じ考え方を持ったメンバーたちとのディスカッションは効率的で、より良いアイデアが出てくるんですよ。

“インサイト”を見つけて
“転換”する

アイデアを出すために、どんな手順を踏んでいるのですか

小林 良いアイデアを出すためには「ユーザーを知る」ことが第一歩だと思っています。ユーザーがどんな状況でその商品に向かい合っているのか、そこでの課題は何か、その課題を解決するためにどういうアイデアを出すか、という手順で考えています。

田中 インサイト発見に似ていますね。インサイトにも色々意味はあるんだけど…商品と向かい合うときに感情が動くことがあるじゃないですか。こういうところが嬉しいな、悔しいな、みたいな。その最大公約数を取るのがインサイトなのかな、と最近思い始めました。

小林 このインサイトに基づいた提案を今後たくさんしていこうということで、アイデアソンの進め方も検証していますね。

アイデアソンとは何でしょうか?

田中 アイデアソンは、社内で頻繁に開催されている、ビービーメディアの社員全員が参加可能なオリジナルイベントです。社内外で「解決したい問題はあるけど、どうしたら良いか分からない」と、相談ベースの依頼が発生するときがあるんです。そういった時に、どうアプローチしたらそれを解決できるか、ひいてはブランドを最もピカッと輝かせられるか…多角的な視点からのアイデアを集めたいときに、アイデアソンを開いています。参加者が意見を出し合いつつ、アイデアをまとめて提案するまでを行うので、それがヒントになって案件に生かされていきます。実際にアイデアソンでの提案がそのままクライアントに採用されて、世に出ている実例もあるんですよ。
このアイデアソンの中でも、インサイトを活かした提案はできると思っています。ターゲットユーザーが商品やサービスに触れたときの感情を整理するフレームワークを用意するなど、インサイトを考えやすくするアイデアソンの進め方を「トライ&エラー」でチャレンジしているところです。

ユーザーの体験を想像してアイデアにしていくのですね

小林 「根源の感情=課題」が軸としてあって、その軸に対するいろんなアプローチである点と点を全部繋げていって…最終的に生まれた線がUX、つまりユーザー体験になると思っています。

田中 根源にあるのがネガティブな感情だとしたら、それをポジティブなものに転換する。みんなが潜在的に抱えている感情の受け皿をアイデアにすることで、今までがっかりしていたようなことをポジティブな感情にできるなんて、考えるだけでもすごく面白くないですか?

UX/UIの普及活動と実践

案件外で、UX/UIの知見を生かして活動していると聞きました

小林 僕は金沢美術工芸大学で、UX/UIについての授業をサポートさせていただきました。「親と子が嬉しいアプリ」の企画とデザインを行うのが授業のテーマだったのですが、それに取り組む上での事前インプットとして「UX/UIとは何か」という座学と、座学の内容を体験するワークショップを開催しました。フラッシュアイデアではなくて、ユーザーがどんな事を考えているか、リサーチを踏まえて明らかにしてからアイデアを考えよう、という流れで実践してもらうことを意識して、授業を実施しました。

金沢美術工芸大学での講義

田中 実は僕も戸板女子短期大学(東京都港区)で企画や動画制作の授業を受け持っています。そこでもワークショップをやっているんだけど、来期は小林くんにも来てもらおうかな(笑)

小林 そこでもUX/UIについて普及活動ができると良いですね。

今、実践しているプロジェクトはありますか

田中 社内プロジェクトで、映像制作の現場での悩み事を解決するシステムを作っています。映像制作の過程で、資源や工数が無駄になっていて、全員がネガティブに思う作業があるんですよ。その作業は当たり前にあるものという認識になっている人も多いですが、それを削減しようということで始まりました。

小林 システムの中身を検討していくうえで、僕は映像制作の現場を見たことがなかったので、実際に見学して、何をどうすればいいか具体的に考えていきました。田中さんが開催する現場に終日張り付いて、監督、プロダクションマネージャー、タレントはどう動いているのか、というのをリサーチしてから要件を決めましたね。

田中 小林くんに実際の作業現場でわちゃわちゃしている様子をしっかり見てもらって、無駄な時間を体験してもらえたことが印象に残っています。

小林 そういった体験を通して、「じゃあもっとこうしたら良いよね」という発想がどんどん生まれました。実際に困っている人の現場を見れたからこそ、システムに落とし込めています。

田中 まさに課題から考える、っていうところで、全員が思っている「これ無駄だな…」という感情の受け皿をシステムにするプロジェクトですね。

システム制作の様子

これからの挑戦

他部署との連携も始まったと聞きました

小林 今年から僕が「マーケティング発想(MI)チーム」という、データからアイデアを創出するチームの一員として活動することになりました。インサイト分析をより実提案に生かしやすくなったので、今まで積み上げてきたものを生かすという意味でも、UX/UI勉強会のメンバーと連携をしていく予定です。

田中 最初は有志のメンバーで集まって意見をかわす勉強会だったものが評価されて、社内ごとに生かされていく。期待を背負っているということでもあると思うので、より一層インサイトに基づいたアイデアづくりを強固にしていきたいですね。

最後に、UX/UIを活用して目指すところを教えてください

田中 「トライ&エラー&エラー」をしていきたいです。今求められているのは、広告のアウトプットだけでなく、0からのチャレンジだと思っています。アイデアソンでも新規ビジネスでも良いんですが、どんどんトライして、失敗して、それを繰り返して新しい合格の基準点を作っていきたいですね。ビービーメディアにはすごいスキルを持つ能力者たちが集まっているんだから、トライしないといけないんですよ。
これは正解がないものだから、データにUX/UIの考え方をかけ合わせて、課題に対するいろんなアプローチを探る、つまり点をつなげて線にしていく、という作業をしていきたいです。

小林 データを活用してどうインサイトに紐づけるか、ということですよね。例えば「30代の主婦が○○という言葉を検索している」というデータは参考の一つにしかならないので、もっと大事なのがリアルな人たちがどう思うか、どうしてその言葉を検索したのかというところだと思っていて。

田中 そう。その部分を、小林くんが代表となってMIチームと繋げていってほしいなと思っています。小林くんの考えるUX/UIでの目標はどんなものですか?

小林 田中さんがおっしゃっていた社内の連携はもちろんのことですが、僕は先ほど話した、映像制作現場での悩み事を解決するシステムを、売るツールにするというのが今一番の課題です。現状は社内のツールとして活用できる目処が見えてきたかなという段階ですが、システムとして社外に展開したときにハマるかどうかがまだ未知数なので、プロトタイプを作って検証しながらどんどんフィットさせていく、ということにチャレンジしたいなと思っています。
あとは、社内には当然のようにUX/UIを実践している人が多いですが、UX/UIの考え方のベクトルを合わせていきたいですね。みんなで同じ方向を向いて、もっと面白く、より潜在的な感情を動かすような広告コンテンツ作りにチャレンジしていきたいです。

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