BRIGHT STORY

2025年12月23日

揺るぎないCM制作を支える
「一子相伝の技」とは
  • # TVCM
長年にわたり様々な企業の映像制作に携わってきたビービーメディア。その中でも継続的に担当させていただいている企業のひとつが、花王株式会社(以降「花王」)です。キュキュット、ビオレ、ワイドハイター、マジックリンなど、多くの製品のTVCM制作を手掛けてきたからこその取り組みや、制作の裏に秘められた想いを紐解きます。

遠藤 高廣

プロデューサー

2012年入社
入社当初から13年間花王案件を担当する。プロダクションマネージャーを経て2016年からプロデューサーへ。TVCMの制作現場が得意。

河﨑 今日子

プロダクションマネージャー

2018年入社
花王案件の担当歴は5年。TVCMの案件をメインに、Web動画やSNS動画の撮影、編集、各種デザインまで、幅広い場面でマルチに活躍する。

北澤 直希

プロダクションマネージャー

2023年入社
入社当初から花王案件を担当。前職の映像制作会社での経験に加え、持ち前の人柄で制作現場に貢献する。

長年のお付き合い

いつから花王さんの案件を担当しているのですか?

遠藤

僕自身は入社当初から13年以上、花王さんのTVCM制作を担当していますが、ビービーメディアとしては、僕が入社するずっと前からお付き合いがあると伺っています。
長年のお付き合いの中で、ビービーメディアとしての担当ブランドは「ビオレ」「トイレマジックリン」「バスマジックリン」「キュキュット」「ワイドハイター」「ディープクリーン」など…多岐にわたります。

その中でもみなさんそれぞれ思い入れのあるブランドはありますか?

遠藤

ビオレは入社してからずっと担当しているので、いちばん思い入れ深いです。

北澤

僕は2023年に入社してからずっと担当させていただいているので、キュキュットです。

河﨑

私はワイドハイターとビオレを3年以上レギュラーでやっています。やっぱりずっと同じブランドを担当していた方が、ノウハウの積み重ねだったり、花王さんや代理店さん、社内プロデューサーとのやりやすさがあるので、最近は固定でブランドにつくことが多いですね。

TVCMにおけるRTBの追求

制作するうえで、花王さんの案件ならではの取り組みはありますか?

北澤

花王さんの案件で特徴的なのは、撮影前に行うテストです。プロダクションマネージャー(以降PM)が商品を実際に使ってみて、TVCM上ではどういった表現や使い方だと商品の良さが伝わるかを検討し、本番の魅せ方を決めていくというものです。

遠藤

いわゆるRTB(Reason To Believe)と呼ばれる「その商品の効果をわかりやすく伝え、商品の効果を信じてもらう」ことに直結する大切な部分です。
なので、商品の効果を最大限に魅せて素敵な映像を作るという「TVCM制作者」としての視点と、実際の日常生活で『あるある』と共感してもらえるような「生活者視点」の感覚。この両面から慎重に検討しています。

具体的にどのように検討しているのでしょうか?

北澤

キュキュットの食器用洗剤のテストは、汚れと食器集めから始まります。
汚れの種類によって、洗剤の泡の反応(汚れの吸着力や泡の染まり方)が変化するので、できるだけ幅広く試せるように、たくさん準備します。生活の中で気になった料理は事前に「汚れリスト」にストックしておいて、その中からピックアップして実際の落ち方はどうかを確認したりしています。「食器も集めるの?」と思うかもしれませんが、皿の色やデザイン、質感によっても汚れの見え方や落ち方が変わってくるんですよ。
その後、汚れと皿の組み合わせを変えながら商品を使ってみて、TVCM上ではどの状態が一番分かりやすく、効果的に表現できるかを記録していきます。大変ですが、まるで実験のように奥深くて面白い作業です。

河﨑

ワイドハイターも同様に、Tシャツや靴下、枕カバー、靴…いろんなアイテムと汚れの組み合わせを試しています。見ている人にとってどんな汚れが「共感性があるか」「ビフォーアフターが分かりやすいのか」という観点で検討しています。
ビオレ ザ ボディは汚れとは違って、泡のテストをしています。「どうプッシュしたら綺麗な泡が出るか」「泡をどのように体に塗ったら魅力的に見えるか」といった観点で、ボディウォッシュを何十回もプッシュして綺麗に出す方法を掴んだり、実際に自分の体に塗って試しています。

遠藤

商品の実際の効果を過剰に表現することなく、最も正確かつ魅力的に伝えるためには、実際に使ってテストを繰り返すことが重要だと考えています。

テストの様子

そのようなテストは他の制作会社でもよくあることなのでしょうか。

遠藤

ビービーメディアほどしっかりやってる制作会社はそれほどないんじゃないでしょうか。汚れや泡のテストも10年以上やっているので、どんな使い方をするとどんな状態になるのか、という知見がどんどん溜まっている状態です。

河﨑

ビオレ ザ ボディも、PM時代の遠藤さんから次のPM、そして私へと代々引き継がれてきました。ワイドハイターは私の代から始まったのですが、その知見は2年目のアシスタントに引き継いでいるところです。まるでビービーメディアの「一子相伝の技」ですね!

テストで得た知見は、撮影現場でどのように活かされていますか?

遠藤

汚れや泡の状態を詳細に把握しているので、撮影をスムーズに進めることができています。テストで掴んだコツを活かして、現場で自分たちで出した泡をそのままCMに使うこともありますね。

河﨑

花王さん側の基準は満たしつつ、私たちの中でのOKの基準もあります。現場では私や遠藤さんの判断が花王さんのGOサインに繋がる時もあるので、自信を持って取り組んでいます。

長年続ける中で生まれる「信用」と「信頼」

撮影現場はどんな雰囲気なのでしょうか?

北澤

シリーズものだと、花王さん、代理店さん、監督さんなど同じチームで制作することが多くて、スケジュール調整や打ち合わせ含め、スムーズに進めやすい雰囲気があります。キュキュットの現場だと僕のことを覚えてくださっているスタッフが多いので「北澤さん」と名前で呼んでもらうことも多いです。

遠藤

どうしても「制作部の一人」で終わってしまう現場もある中で、レギュラーメンバーが名前で呼んでもらえるのは長く続けているからこそですね。今やキュキュットのチームで北澤くんの名前を知らないスタッフはいないんじゃないのかな。

北澤

ありがたいです!ビオレの現場はどんな感じなんですか?

河﨑

100人くらいのスタッフがスタンバイしている中で、私が綺麗に出した泡をタレントさんの手に乗せ移すという撮影をしたことがあって、あの時の緊張感はすごかったです...私が成功させないと撮影が進まない状況だったので。遠藤さんやタレントさん本人にも励まされながら乗り切った記憶があります。

遠藤

河﨑さんが泡を出して、僕がモニターで泡の状態チェックして、「ダメ!もう一回!」「OK!それでいこう!」みたいなやり取りしながら進めた現場だよね。

河﨑

現場で誰よりも泡のことを知ってるからこそ任せていただける役目ですが、あれは人生でいちばん痺れた現場でした。後輩からも「あんなに緊張している河﨑さんは初めて見ました」って言われましたね(笑)

ビービーメディアだからこそできたことはありますか?

遠藤

何度もテストを繰り返して汚れの落ち方や泡の出し方を研究するというような、ブランド理解の考え方から生まれるRTBに対する高い熱量が、ビービーメディアならではだなと思います。
僕が入社した当時から既に「制作部として、どうやったら綺麗な泡が出るか知っていなければいけない」という意識がありました。そこから現在に至るまで、PMがその意識と技を引き継いで、クオリティに繋げていけているというのは、長くお任せいただけている理由の一つになっているのではないかなと思います。

河﨑

制作部の汚れや泡に対するこだわりは強いです。長く続ける中で「誰よりもこの商品を理解するぞ!」くらいの勢いで取り組んでいます。

どんなことを意識して取り組んでいますか?

遠藤

長いお付き合いが続く中で、安定した受注をいただくということは割とよくあることかもしれません。ただ、そういった環境に驕らず「信用を得続ける」ことは何より大事だと思っています。撮影前のテスト含め、日々の業務で誠実な取り組みを積み重ねて、実績や信用に繋げていきたいです。
あとは、会社としてはもちろん、1人の人間としても信頼していただくことを意識しています。僕が長く担当させていただいている中で花王さんの担当者が変わることもあるので、ビオレ ザ ボディは今や僕の方が歴が長いんです。なので花王さんのルールやシステム、新しく担当になる苦労なども理解したうえで、歩み寄った制作をしていきたいと思っています。

河﨑

遠藤さんの案件だと、打ち合わせの回数がすごく少ないなって感じます。

遠藤

そうですね。ある程度僕が判断したことで通してもらえることもあるので、打ち合わせが通常の半分くらいの回数で済むときもあります。その辺は信頼してもらっているのかなと感じるポイントです。今の担当者の方とは月曜日に「今週もお願いします」の電話から始まり、金曜日に「お疲れ様でした」の電話で終わるくらい密にコミュニケーションを取らせてもらっています。

PMのお二人も、信頼していただいているなと感じるエピソードはありますか?

北澤

小さいことではあるんですが、撮影前に花王さんの担当者と会ったとき「北澤さん、いつもありがとうございます!今回もよろしくお願いしますね!」と言われたときは嬉しかったですね。僕らPMはクライアントと直接話す機会は多くないので、記憶に残っています。

河﨑

色々ありますが、私はメールで「泡神さまへ」って送られてきたことが印象的でした(笑)

遠藤

泡神さまって、もう僕より信頼されてるじゃん!(笑)

「花王チーム」の挑戦

これから取り組んでいきたいことを教えてください。

遠藤

花王さんに、プロデューサー以外の制作メンバーのことをもっと覚えてもらいたいです。河﨑さんや北澤さんは既に覚えてもらっていたりもするので、そのほかのメンバーも含めて全員が花王さんとのコミュニケーションの場に立てるチームにしていきたいです。あとは花王さんと同じくらい代理店さんとも良い関係を持って、花王チームとしてのコミュニケーションを密にしていきたいなとも思っています。

河﨑

遠藤さんのおっしゃった制作メンバーの話とも繋がりますが、私はレギュラーで長い期間、毎年制作を担当させていただいているので、最近はPMという立場ながら花王さんの担当者と直接話す機会も増えてきました。
そういう距離の近さもあってか、以前花王さんと一緒にワイドハイターのSNS用の動画を作る機会があったんです。監督、デザイン、編集も全部ビービーメディア内で進めて、「こういう風にSNS運用していきませんか?」「こういうイラスト使いませんか?」と色々提案させてもらって、すごく良い経験をさせてもらいました。

遠藤

あの時の動画、確か河﨑さんがイラストを描いたんだよね?

河﨑

はい、実際の動画は別のデザイナーさんが描き起こしたので私のイラストは使われなかったんですが、提案として出せること自体が価値のあることだなと思っていて…そういう提案の機会を生かして、今の関係値にとどまらずもっと色々なことをやっていきたいなというのが、私の展望です。

河﨑さんが描いたイラスト

北澤

僕は現場寄りの考えになってしまうんですが、キュキュットという「大きなお仕事を任せていただいている」という自信を胸に、日々の業務をより一層楽しんで取り組んでいきたいです。将来的にはプロデューサーを目指しているので、遠藤さんのような存在になれるように頑張ります!

遠藤

それは初耳です。ぜひ、最後のところを強調しておいてください(笑)