この記事では、読み書きに困難を抱える発達性ディスレクシアの小学生がどんな困難な状況におかれているかを理解するためのVRコンテンツ『もしもディスレクシアの小学生なら』についてご紹介します。
化粧品で有名な企業「資生堂」のクリエイティブを手がける部署(当時は資生堂クリエイティブ株式会社)からの依頼で企画・制作しました。そもそもディスレクシアって何?なぜ資生堂がディスレクシアのVRを作るの?皆さんの疑問も含めてご説明していきます。
目次
ディスレクシアとは?ディスレクシアVR制作を制作することになった背景
ディスレクシアとは何か?
小児期に明らかになる特異的な読み書き障害で「発達性ディスレクシア」と言われています。知的な遅れや視聴覚障害ではなく、読み書きに困難を抱える学習障害です。ディスレクシアの症状をもつ人は、日本では7~8%と言われていますが、その事実はあまり浸透しておらず、親、教師あるいは本人ですら気づいていないことが多いのです。
なぜ資生堂がディスレクシアVRを制作することになったか?
2025年1月に「美を疑え」というコンセプトで資生堂クリエイティブ展が開催されました。表面的なものにとらわれず、考え方、生き方、世の中への作用まで考えることをテーマとした資生堂クリエイティブ主催の展示会です。展示コンテンツを企画する上で、資生堂様の制作チームに所属するメンバーの家族がディスレクシアであることから、ディスレクシアへの理解が進むきっかけをつくる目的で、ディスレクシアを疑似体験できるVRの制作に取り組むことになりました。そして弊社に制作をご依頼いただき「もしもディスレクシアの小学生だったら」というVRコンテンツの制作がスタートしました。
企画制作の裏側と、体験会で実感した「VRだからこそ伝わるもの」
NPO法人エッジ(ディスレクシアの正しい認識の普及と支援を目的とした特定非営利活動法人)の皆様にご協力とアドバイスをいただきながら、資生堂のクリエイティブチームとともに企画・制作がスタート。小学生の視点や感情の変化を自分ごと化できるような体験デザインと演出表現を目指しました。
ディスレクシアの小学生が日常で直面する状況を再現するため、実際の学校の教室を撮影して空間を設計。文字を読む際の視点誘導や、読めないことに対する周囲からのヒソヒソ声、焦りの感情などを、視覚と聴覚を活用して表現しました。また、VRゴーグル装着後、すぐに仮想空間に移動するのではなく、現実空間からの移行をシームレスにすることで、より没入感を高める設計にしました。さらに、簡単な操作で体験できる仕様となっており、初めてVRを体験する方にも優しいデザインとなっています。
最初のベータ版が完成した際、NPO法人エッジ様のイベントにてテスト体験会を実施しました。そこで、忘れられない出来事がありました。
最初の体験者の方がVR体験を終えゴーグルを外した途端、涙を流されたのです。発達性ディスレクシアのお子さんを持つお母様でした。「なぜうちの子はディスレクシアなのか」という苛立ちから、これまでお子さんを理解してあげられなかったそうです。しかし、このVRを体験したことで、ご自身のお子さんが学校でいかに困難な状況に置かれているかを理解し、これまでの反省とお子さんの気持ちを想うと、自然と涙が溢れてしまったとのことでした。そして、「ぜひ学校の先生をはじめ、多くの方に認知と理解を広げてほしい」とおっしゃっていました。私たちが目指していたのは、まさに体験者の方にこのような思いを抱いていただくことだったため、ディスレクシアVRの制作に取り組んできたことに自信を持ちました。
その後の資生堂クリエイティブ展本番でも多くの方に体験いただき、賛否両論を含め、さまざまな反響を得ることができました。
VR体験をより多くの方へ。ディスレクシア理解を広げる今後の活動
資生堂クリエイティブ展を終えてからも、私たちの取り組みは続いています。
せっかく作ったVRをこのままで終わらせるのではなく、本来の目的であった「ディスレクシアへの理解が進むきっかけをつくる」ということ活動を継続していこうという事になりました。現在は、NPO法人エッジ様の活動の力になれるよう、様々なイベントや団体の活動にお邪魔してディスレクシアVRを少しでも多くの方に体験いただき、ディスレクシアへの理解が進むきっかけをつくるための活動を、資生堂様と一緒に継続しています。
さらに活動を活性化するために、ディスレクシアVRの体験の問い合わせページを制作しております。
https://dyslexia-vr.com/
団体で体験をご希望の方はぜひお問い合わせください。