No.11

100年の歴史と向き合った
アートワーク

Kubota Engine Discovery

株式会社クボタのエンジン事業が2022年に100周年を迎えたことを記念して企画された特設サイト「クボタエンジンディスカバリー」。
デザインはもちろんのこと、企画やコンセプトも0から練り上げました。
トータルブランディングにおいて、プロジェクトをリードしたデザイン設計の背景とは。

  • 藤井 祐一|アートディレクター

    2004年入社
    ブランドサイトやコーポレートサイトのみならずロゴマークやイラスト、紙媒体まで幅広い案件でデザイン制作・アートディレクションを担当。

ユーザーに探求してもらうための周年サイト

プロジェクトスタートの経緯を教えてください

藤井 クボタエンジン事業推進部さんがエンジン事業100周年を記念したミュージアム系のサイト制作を考えていた際に、弊社が制作した、森永製菓様のモリナガデジタルミュージアムを見つけて問い合わせいただいたのがきっかけです。ミュージアム系のサイトと聞くと、3D空間を閲覧していくようなイメージになると思うんですが、ビービーメディアとしてはそうではなく、読み物系のコンテンツを含めたサイトをご提案しました。

なぜ読み物系のコンテンツを提案したのでしょうか

藤井 ミュージアム系のサイト表現は、3D空間の中に入って、クリッカブルのポイントがあるのが多いと思いますが、それってちゃんと読むのかなと疑問がありました。空間や立体構造に目を奪われてしまうので、「没入する」というUX面を考えると100周年を伝えることができず本質とズレてしまうのでは無いかと思ったんです。なので3D空間のサイト表現はやめて歴史は歴史、エンジンの話はエンジンの話というようにきちんと読んでもらえるような構成にしました。

没入させる体験

シンボルマークはどのように制作が進んだのか教えてください

藤井 初期提案時にシンボルマークは作成していたんですけど、正直「どこの企業でも使える100周年のシンボルマーク」になってしまっていました。
その後制作を進める際に工場見学に行ったり、クボタエンジン事業推進部の方からお話を伺い、100年の歴史や鋳造の技術・エンジンの構造・製造工程を知り、「クボタエンジン事業推進部の100周年シンボルマーク」に昇華していきました。
完成したシンボルマークは英数字の「100」であり、縦向きになることで漢数字の「百」にも見えなくもない。エンジンのクランクケースやピストンにも見えなくもない。また鋳造の型などにも見えます。もしかしたら他の何かに見えるかもしれません。
そういった、より「余白」のある「何にでも感じる」「何にでもなる」というような、見る人が「何かを想う」シンボルマークを制作することができました。

軸となったキーワードはありましたか

藤井 プロジェクトチームでサイトのネーミングを検討している際に、100周年ということをただ単純に全て差し出すような形ではなく、ユーザーに自分で探して没入してもらうようなサイトにしたいね、ということで「ディスカバリー」というワードが出てきました。
実は企画アイデア出しの打合せをしている際に、各コンテンツに統一感が無くてもいいのではないかという話をしていて。
ディスカバリーしてもらうためのサイトだから、各コンテンツページのボタンの位置とか全然違ってよくない?ユーザーが探すことも没入感じゃない?ということで、統一するものは色や書体だけみたいな感じはありましたね。

デザイン面で考慮したポイントを教えてください

藤井 クボタさんのエンジン事業が何をしてきたのかが伝わるように考えるのがベースでした。もちろん細かいレイアウトや文字の大きさ等の工夫はあるかもしれないけど、それは割と小さい問題で、エンジン事業部が何をしているのか、その印象を上手く形にすることに注力しました。
例えばサイトのトップページに出てくるイラストは、一見よくわからないところもあるんだけど、それが実はクボタエンジン事業のアイデンティティになっています。
クボタさんのエンジンって標準仕様はありつつ、購入してくださるお客様(機械メーカー)の製品仕様によって何をカスタムしたほうがいいとか、オプションをどうするかとか1機種1機種考えて作っているそうなんです。
マシンの特性に合わせてエンジン作りをしているという点でも、少しずつ変化するようなこのイラストを描いた意味があるのかなと思っています。

TOPページのイラスト
藤井さんはエンジンが好きと伺いました

藤井 好きです!若いころからバイクが好きで、大学生の頃もカスタムするのが流行っていたのでよくやっていました。エンジンを開けて直していくという名目で壊していくみたいなことを経て、それぞれのパーツにどんな魅力があるのかということを自分なりに知っていました。
なので例えば、先ほどのイラストもそうですし、今回制作したシンボルマークについても、エンジンの構造でどんな部品を使っているのか知っていたので、シリンダーヘッドとかピストンになぞらえた発想も出てきました。
今回は自分が最初に作成したコンセプトデザインがロゴやwebページ等、プロジェクト全体のリードにつながったので、あらゆるところに経験が活かせましたね。

シンボルマークの遷移

B to B to Cメソッド

今回制作したサイトはB to B to Cですが、どのような考え方で取り組んだのか教えてください。

藤井 弊社の考えるB to B to Cメソッドとは、クライアント様の顧客を中心とした直接的なターゲットだけでなく、「クライアント様の顧客の顧客」を含む社会全般に向けて積極的に情報発信をしていくことです。
これを僕はB to Cとほぼ同じ考え方だと認識しています。
製造者がお客様に内容を伝えるために、魅力的なものにするという行為は必然的にあると思うんですけど、Bに対しても同じアプローチをすると、同じ感動を得られるという考え方だと思うんですよ。
結局は人と人との仕事なので、いくらビジネスだとしてもいいなって思えるものを伝えるのがベストなのではないかと。ユーザーも企業もいいなと思ったものを買うことに変わりはないですからね。
B to B to Cとはいえ難しいことは考えずに、いいなと思えるものを作るということが大切だと思っています。

B to B to Cメソッドの図

国内外の声とこれから

ドイツの展示会でアートワークを活用いただいたと伺いました

藤井 ドイツのbaumaっていう世界中のメーカーが出展する3年に1度のイベントがあり、クボタエンジンのブースで今回制作したエンジンディスカバリーのアートワークを活用いただきました。展示会場では、重機だけではなく、エンジンや技術、ネジ1本等さまざまなものが展示されていました。
実際に僕もドイツに行って現地の方々の意見を聞けたので、とても貴重な経験になりました。「なんでこのシンボルマークにしたんだ?」とか聞いてくれて、海外の人も興味をもってくれているんだなと嬉しくなりましたね。

ドイツの展示会でも注目を集めました。
シンボルマークを元にグッズ展開をしました。
海外販売会社が現地での表彰式のために制作したトロフィー。
デザイナー主導でプロジェクトを実施して得た経験はありますか

藤井 デザインって何に対しても必ずテーマを持って取り組んでいるんですけど、今回はそのテーマを基にWebページはもちろん、シンボルマークやイラスト制作も初期構想から作業が出来たので、よりエンジン事業推進部が伝えたいことを押し出せているプロジェクトになったと思います。

最後に、今後やってみたいことを教えてください

藤井 定められたカテゴリーで成果物を出すことは基本だと思うんですけど、入り口がそこであったとしても提案と評価でいかようにも広がるっていう体験ができました。なので例えば、ロゴやビジュアルを作った後に、横の広がりが叶えられるのであれば新しいカテゴリーの提案してみたりとかお話をいただけるように物を作っていくっていうことを個人的には繋げていきたいなと思ってます。
あと賞出しの話でいうと、わりともう僕は年寄りですけど、若い頃ちょっと夢見てた賞にエントリーして受賞できたものもあります。叶うんだったら賞をもっと取りたいなって。早くその目標を持っておけばよかったなと思ってますけど(笑)

受賞

第44回 日本BtoB広告賞
ウェブサイト<製品PR>の部
銀賞
株式会社クボタ「クボタエンジンディスカバリー」
2023 ADC 102nd ANNUAL AWARDS(第102回ニューヨークADC賞)
MOTION / FILM CRAFT 部門
メリット賞
株式会社クボタ「KUBOTA ENGINE DISCOVERY」
New York Festivals 2023 TV&FILM Awards
Corporate image/Branded content部門 Finalist
株式会社クボタ「KUBOTA ENGINE DISCOVERY」

TOPへ戻る

記事TOP