No.3

「新しい表現」へ
挑戦し続けること

MAJOLICA MAJORCA
「MAJOLICA MUSEUM」

ビービーメディアは、多くのお客さまと10年を超える継続した密接な関係を築かせていただいています。今回はそんなお客さまの一つ、資生堂のメーキャップブランド、マジョリカ マジョルカが2017年2月に東京メトロ新宿駅構内で実施したサイネージ広告『MAJOLICA MUSEUM』の事例から、お客さまや協力企業とのパートナーシップを生かした企画のポイントや、空間演出の工夫点について制作チームに伺いました。

  • 松川 美沙|アートディレクター

    2012年 入社
    マジョリカ マジョルカには2012年〜2016年にデザイナー、アートディレクターとして参加。本プロジェクトでは、全体の企画、アートディレクションを担当。学生の頃からマジョリカ マジョルカのWebサイトのファンだった。

  • 高橋 紗登美|企画演出(ディレクター)

    2009年 入社
    テレビCM制作部所属後、プランナーとしてインタラクティブ部門へ配属。現在は映像中心の企画・演出として活動中。マジョリカ マジョルカには2011年〜プランナーとして時折参加。本プロジェクトでは企画、映像ディレクションを担当。

駅構内に出現した魔法の博物館
『MAJOLICA MUSEUM』

駅構内の35面のデジタルサイネージに、錯視の仕組みを使った映像を再生させることによって、柱をマジョリカ マジョルカのアイテムのショーケースに擬似的に変化させ、空間を駅から魔法の博物館に変身させたサイネージ広告。正にありそうでなかった手法ですが、この企画はそもそもどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

松川 マジョリカ マジョルカは2003年の7月に誕生したメーキャップブランドですが、ビービーメディアでは、資生堂宣伝部さまのご依頼をいただいて、ブランド創設時からCM、Web動画、グラフィック撮影、Webサイト、イベントの制作をお手伝いさせていただいています。今回は、デジタル領域でのチャレンジ企画のお仕事をご依頼いただいたきっかけで企画が始まりました。特にこれ、と言った手法の指定はなかったため、最初はスマホアプリの制作を検討したり、自由な発想で企画の進行を行っていました。という仕組みを入れることで作品の強度が増すと確信していましたし、実現したいという思いは強かったです。

高橋 そんな感じでしたね。一方で、企画の始まる半年ほど前から、地下鉄の交通広告を幅広く手掛けていらっしゃる、メトロ アド エージェンシーさんと共に、交通広告に関する新しいアプローチの検討をしていたので、私の中ではサイネージ広告でチャレンジしたいという気持ちがありました。

松川 弊社では2015年に実施した、画像分析技術を使用した『マジカルドレッサー』など、今までも様々なチャレンジ企画を提案させていだいておりましたので、今回も新しい表現への挑戦という観点で、サイネージ広告のご提案をさせていただきました。

サイネージ広告での挑戦という方向性の決定から、実際の企画への落とし込みへはスムーズに進行したのでしょうか?

松川 実は隣り合う2つのサイネージを利用して、擬似的な3Dを再現するアイデアは企画の初期から出ていたものの一つでした。でも「これだ!」とハマる世界観が浮かばなくて…。そんな時、資生堂宣伝部さまとのお打ち合わせの中で、「マジョリカ マジョルカのアイテムたちが展示されている魔法の博物館」というキーワードをいただきました。その瞬間、私の頭の中に、ゴージャスな装飾の施された展示台の小部屋の中に、ふわふわと魔法にかかったマジョリカ マジョルカのアイテムたちがきらめきながら漂っている情景が広がって…、「これだ!これならいけそうだ!」と思いましたね(笑)。

高橋 ただ頭の中で思い描けても、前例がないから実際にはどのように立体に見せるのかわかっていなかったので…不安でしたね…。でもとにかくつくってみよう!という感じでした。

パートナー企業との共同提案

前例がない企画を実施するのは、とにかくハードルが高いと思います。特に今回のような交通広告では、色々な制限を一つ一つクリアしなければならないと思うのですが、どのような工夫で切り抜けていったのでしょうか?

松川 先ほど高橋さんの方からお話したメトロアドさんとの協業関係によって、実現できたという背景は大きかったと思います。

高橋 企画の初期から、交通広告における様々なルールや、気をつけなければいけないポイントを教えていただいたので、スムーズに進行することができました。設定いただいた現地での事前のテストの時に、初めて9本の柱の中に浮かぶマジョリカ マジョルカのアイテムたちを見て、改めてこの場所を”マジョリカ マジョルカの博物館”という特別な場所にしたいと思いました。

松川 この企画を実施したすぐ後に、同じ資生堂さまのブランド『マシェリ』のNissy(西島隆弘)さんとのコラボキャンペーンの企画で、”ファンが訪れたくなる場所”として渋谷ヒカリエを空間演出する、サイネージ広告を提案させていただきました。2つのストーリーが交錯し、音楽も同時に楽しむことが出来る、というトライもしています。

魔法の空間を生み出す

映像の演出やデザイン面で特にこだわったところはどこですか?

松川 パッと見では気づかないようなディティールまで、商品パッケージやブランドの世界観が反映できるようにこだわりましたね。博物館の展示スペースとなっている「お部屋」の壁紙はパッケージのデザインをモチーフとしたものになっていたり、商品が載っている台のデザイン、柱を巻くラッピングにもブランドのモチーフを入れ込みました。

高橋 映像の演出では色んな形でのテストを手当たり次第試してみましたね…。3DCGでシミュレーションしてみたり、PCのモニターを2つくっつけて実験してみたり。牛乳パックを切り抜いたところに、スマホを2つはめ込んだものでシミュレーションしてみようとしたこともありましたね!

松川 あれ、ボロボロになってますけどまだ思い出として机の引き出しに入っています(笑)

高橋 色々試してみて、3DCGも素敵な感じに仕上がって、「これは行けそうだ!」という自信も湧いてきていたのですが、それでも実施2週間前に行った現地テストでは思っていたイメージと異なる部分があって、ブランドのモチーフである”マジョリカバード”が柱の間を飛び回る演出部分では、あまりに鳥のスピードが遅すぎたり、全体的に画面が暗すぎたり…。現地でブランドのクリエイティブディレクターと細かい部分まで相談しました。

松川 マジョリカバードが柱の一つで落とす羽が手紙に変わって、そこに表示されたQRコードをスマホで読み取ったユーザーが”あなたにぴったりのアイテム”を見る事ができる、という仕掛けがあるのですが、そのQRコードの表示される時間も何度もテストしましたね。

ユーザーの”体験”をデザインする

実施時、現地での反応を教えてください。

高橋 地下鉄の通路にあるサイネージって、そもそも通り過ぎながら見るものなので、果たして気づいてくれる人はいるのかな?という心配があったのですが、予想よりもたくさんの人が立ち止まって見てくれたのが印象的でしたね。特に人間の目は足りないものを補って認識できるので、意外と歩きながらだと3Dに見えている人が多いようでした。また、何人かの友人に聞いてみたのですが、「柱に近づいたら鳥が飛んで来た」と言っていた人が多かったです。センサーを設置しているわけではないのに、「不思議なことが起こりそうな空間」がデザイン出来ていたのかな、と思います。空間的な広告の強さを感じましたね。

松川 9本の柱を少し離れて見ないとマジョリカバードが飛び回っていることはわからないのですが、鳥を追いかけていた子供たちもいて。何にもない柱と柱の間の空間も、補完して認識してくれていたようです。

SNS上でも色々な反応がありましたね。

高橋 Twitter上では「この世界の中に入ってみたい」とか、「“美”への優先順位の高い企業でないと実現できないことだ」などのコメントが上がっていましたね。ただ単に「楽しい」「きれい」以上のコミュニケーションを生み出す空間アプローチができて嬉しかったです。

松川 ビービーメディアでは映像・デザイン・テクニカルのチームがワンフロアで制作活動を行っているので、密接なコミュニケーションが実現できています。そのノウハウを生かして、空間演出にまで表現の幅を広げること出来ることがわかって嬉しかったですね!今後もメディアの枠を超えた新しい表現に挑戦し続けたいと思っています。

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