No.10

新たなVR表現で
コミュニケーションが
生まれる体験デザイン

SHISEIDO’s SKIN TECHNOLOGY VR

SHISEIDOのスキンテクノロジーをVRで体感できるコンテンツ『SHISEIDO’s SKIN TECHNOLOGY VR』。
受動的になりがちなVR体験から、お客様と店舗スタッフの方とのコミュニケーションを活性化させた体験デザインの背景とは。

  • 大矢琢磨|エクスペリエンスプランニングディレクター

    2008年入社
    テクノロジーを活用した体験コンテンツを中心にAR・VRやWEBコンテンツをはじめ、幅広い案件をプロデュースしている。

  • 田中宏大|映像ディレクター

    2007年入社
    アニメーションからデジタルの経験を生かした
    映像・デジタル作品を中心に制作。

  • 穂坂共子|プログラマー

    2018年入社
    AR・VRを中心に体験型コンテンツのプログラム制作を担当している。

新たなVR表現

プロジェクトの概要を教えてください。

大矢 SHISEIDOは2022年に150周年を迎えました。その周年に合わせて各国店舗でSHISEIDOの長年に及ぶ肌研究の歴史やスキンテクノロジーについてバーチャル空間で体験できるVRコンテンツの企画制作と、グローバル展開のアクティベーションのご相談いただきました。ビービーメディアとしてはこれにとどまらず、来店いただいたお客様と、店舗スタッフの方とのコミュニケーションをどれだけ作れるかという「体験デザイン」をトータルに設計し、その中心にVRコンテンツを位置づけることを意識して企画・提案しました。

多言語対応によってグローバル展開が実現。
日本、中国、マレーシア、カナダの店舗やイベントにて体験いただきました。

コミュニケーションが
生まれる体験デザイン

コミュニケーション設計をしていくうえで工夫した点はありますか?

大矢 VRはどうしても仮想空間の世界だけになってしまうデメリットがあるので、お客様が入店してから退店するまでどのような気持ちでいると、お客様と店舗スタッフの方とのコミュニケーションが生まれやすいかを考えて設計しました。
お客様の行動・気持ちを軸にして、店舗スタッフの方の行動、店内の状況、VRコンテンツの状況を時間軸でフロー化しました。コミュニケーションの発生するポイントを明確化してコンテンツに反映しています。

田中 僕は演出の視点でVRへの没入感を意識しました。
手に実際の商品を塗布しその中に入っていくような演出で始まるのですが、自分の肌の中へ入っていくアトラクションのような演出と気持ちが華やぐようなシーンを入れて、肌テクノロジーのストーリーを体感できるようにしました。
VRを通して、後半に向けて気持ちを高めてもらうことで、体験した後のお客様と店舗スタッフの方とのコミュニケーションにつながるよう意識しました。

コミュニケーションマップのイメージ
フローの中でも特に意識した点はありますか?

田中 商品を使うことをキッカケとして、スキンテクノロジーについてのVR体験が始まるっていう流れは結構大事にしていました。実際に店舗で何をやっているかを調べましたね。あと後半で気持ちが華やぐシーンと合わせて、香りの演出を試行錯誤しました。

大矢 実際に香りをそこの場でも出してるんですよ。

田中 VR体験しているお客様の横で、店舗スタッフの方が香りを付けたコットンを揺らしているんです。アナログですけどね。本当にちょっとしたことですけど、VR体験の後のコミュニケーションのタネを蒔いていました。

大矢 体験時間も重要なポイントですね。繰り返しになってしまいますが、VR体験後のコミュニケーションや会話に繋がる流れを含めての店舗体験全体を大事にしていたので、演出や情報を詰め込みすぎてVR体験だけで満足!とならないように最適な体験時間を模索しました。

アクションに合わせて、タッチできたり、実際に香りの演出が楽しめます。
ARでの表現も組み込まれていましたよね?

大矢 確か社内のアイディアから始まったんですけど、元々エンジニアがMeta Quest2を研究していて、ちょっとしたAR表現ならVRゴーグルをかけながらでもできるっていうことを教えてもらってコンテンツに入れました。

田中 見るだけのVRだと受動的に終わってしまうけど、手をかざすとその肌の中に入ってくるっていう能動的な体験にしたくて。入り方とか、その実景部分とVR部分の間の繋ぎは何度も調整していました。

トライ&トライ

店頭での体験を意識して気を付けた点はありますか?

穂坂 実装面ではバーチャル空間内で表示するオブジェクトと体験者との距離感を試行錯誤しました。ゴーグルをかけると手の形をしたガイドが見えます。そのガイドに実際に手を合わせると映像がスタートするのですが、人によって腕の長さが違うので、どのあたりがタッチする距離としてベストなのか、弊社内の腕の長さの違うスタッフで何度も検証しながら探っていきました。
また、SHISEIDOの店舗スタッフの方や研究員の方々にもご協力いただき、延べ100人以上に体験してもらうことでベストな距離感を導くことができたと思います。

大矢 さらに、どのタイミングでどのような反応をするか観察することで演出のタイミングや尺感調整などトライ&トライを繰り返していきました。
基本的には弊社内で調整していましたが、メンバーはVRを分かってしまっているので、実際に来店されるお客様はどういう反応をするのかシミュレーションするためにも、たくさんの方に体験していただけたことはクオリティアップに繋がったと思います。

田中 SHISEIDOの担当者様が元店舗スタッフの方だったこともあり、店舗での接客フローを熟知されていたので、VRコンテンツの運用のしやすさなども検討できました。
納品後は店舗のスタッフさんに運用いただくので、なるべく簡単に扱っていただけるようなアクションや仕組みを検討していきました。
自分たちだけでは発見しづらい懸念点など店舗ならではの意見が出て大変ありがたかったです。

使用マニュアルのイメージ

実施結果

実際に店舗で体験したお客様の反応はどうでしたか?

大矢 香りのところですかね。映像で香りに包まれる表現が流れているときに、店舗スタッフの方が横で頑張って香り付きのコットンを揺らすという。終わった後に「何かいい香りがしたんですけど!」とコミュニケーションの一つになったと聞きました。
VR体験のあとの接客で、VR映像の中に出てきた話題や商品の話を上手く活用していただいたようです。

田中 元々こちらの企画は「店頭でのコミュニケーションをVRで活性化させる」という自分の中での狙いがあったので、計画通りの体験デザインができたと思います。

これから挑戦したいことはありますか?

大矢 コンテンツ自体の体験だけではなくて、そのユーザーの動きというか、フロー全体を通して、どういう体験にしていくかっていうのを追及していきたいです。そこを考えることによって、よりコンテンツの役割や存在意義の精度を高くできると思っています。

田中 僕はやっぱり映像を作る職種なので、VRとか新しい技術、映像的な知見を活かしながら、映像を使った新しい表現を今後もいろいろチャレンジできたらなと思っています。

穂坂 視覚や聴覚など感覚を複数使うとより伝わりやすいことが今回改めて分かったので、今後は感覚を複数使い、体験いただいた人の気持ちを動かすコンテンツを制作したいです。

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